セブン銀行グループ 統合報告書 2026 財務戦略担当役員メッセージ

トップライン引上げと利益率改善に向けた取組みを徹底し、企業価値向上へ。 2026年度は収益性と資本効率回復に向けた「スタート」の年。

常務執行役員
企画部担当 兼 企画部長

清水 健

2021-2025年度中期経営計画の振返り

2025年度連結業績は、経常収益が過去最高の2,200億円と、増収を確保しました。一方、連結経常利益は301億円と減益、当期純利益は、クレジットカード事業等に係る減損損失84億円の計上等により、134億円と大幅減益となりました。この結果、ROE(自己資本利益率)は4.8%に落ち込み、前中期経営計画で掲げた「連結経常収益2,500億円」、「連結経常利益450億円」、「ROE8%以上」という財務目標はいずれも未達となりました。

未達の要因は、主に3つと捉えています。第1は、クレジットカード事業です。2023年にセブン・カードサービスを連結子会社化した際には、セブン-イレブンのお客さまを核とした会員基盤拡大を図る計画でしたが、想定した拡大を実現できませんでした。第2は、海外事業です。米国はローンビジネス等でサービスの多角化を図る計画が想定どおり進まず、インドネシアやフィリピンでは、競合参入の大きな環境変化等があり、業績が伸び悩みました。第3は、マクロ変数の変動リスクの織込み不足です。デフレ環境を前提に計画を描いており、金利上昇に伴う資金調達コスト増加やインフレに伴う運営費等の増加を、十分に織込めていませんでした。これらの要因により、中計目標未達となったことについては、重く受け止めています。要因分析を踏まえた根本的な課題対応により、今後、確実に増益体質への転換を図ることができるよう取組んでまいります。

一方、この5年間で着実に積み上げた成果もあります。基幹事業の国内ATM事業は、2025年度末時点で設置台数28,536台、総利用件数は11.2億件と過去最高となりました。また、2023年にサービス開始した「+Connect」は、採用社数が50社を超え、特に地方銀行での導入が進みました。直近は、自治体の給付金をATMで受取ることができるサービスが好調で、この1年で導入自治体が急速に拡大しました。さらに、事業ポートフォリオ多角化も着実に進捗しました。リテール事業の預金残高は6,524億円、口座数350万口座、個人向けローン残高は792億円へと成長しました。海外事業は、目標には届きませんでしたが、連結経常収益の5年間CAGR(年平均成長率)は9.9%となり、2025年度には米国を筆頭に、インドネシア、フィリピン、マレーシア4か国すべてで黒字を達成しました。

新たな3か年見通し(2026年度~2028年度)

2026年3月期決算公表時に、2028年度の到達点を示した「3か年見通し」を公表しました。この見通しでは、2028年度において、連結経常収益2,800億円、連結経常利益400億円、ROE8%以上という目標を掲げました。「中期経営計画」ではなく、「3か年見通し」としたのは、マクロ環境や技術動向等の変化が非常に速く、詳細な事業計画を定めても、その前提条件が短期間で変わるリスクが高まっているためです。環境変化には、機動的かつ柔軟に打ち手を変えて対応するとの前提で、敢えて詳細は語らず、一方で、「企業価値向上に向けて絶対に達成すべき定量目標」に強くコミットすることが、投資家の皆さまからの信頼回復に不可欠だと考えた次第です。この目標は、楽観的見通しに依存するものではなく、不採算事業の減損処理等を終えた強固なバランスシートを起点に、確実な成長要素を織り込んだものです。初年度の2026年度は、構造改革途上であり、経常収益2,355億円、経常利益295億円と増収減益計画ですが、2027年度以降は、増収増益を継続的かつ確実に実現する力強い成長軌道へ回帰します。

企業価値(株価)は、資本コストとROEの差分であるエクイティ・スプレッドの幅にほぼ連動して動いています。従って、企業価値を高めるには、エクイティ・スプレッドのプラス幅を拡大することが重要です。金利上昇に伴い、CAPM(資本資産評価モデル)に基づく当社の株主資本コストは6%台半ばに上昇、先行きの金利動向次第でさらに上昇する可能性もあります。一方、2025年度のROEは4.8%に留まり、エクイティ・スプレッドはマイナスに陥る厳しい結果でした。当社が、2028年度目標としてROE8.0%以上を必達とするのは、資本コストを安定的に上回るプラスのエクイティ・スプレッドを持続的に拡大させ、資本市場からの評価を高めるためです。そのためには、中長期的な企業価値向上の源泉となるROEの抜本的改善が必要です。

ROE改善には、これを「売上高純利益率」、「総資産回転率」、「財務レバレッジ」に分解し、打ち手を実行せねばなりません。当期の「財務レバレッジ」は5.51倍、「総資産回転率」は0.14回と、資産効率や財務構造は、ここ数年安定推移しています。一方、当期の「売上高純利益率」は6.1%となり、前年度の8.4%から大きく悪化しました。従って、「ROE8.0%以上」へ引き上げるための打ち手は、各事業における「利益率改善」であることが明確です。このため当社では、利益率の抜本的改善に向け今後3年間で以下のような取組みを進めていきます。

主力のATMプラットフォーム事業では、ATM1台あたりの収益性を適正水準へ回帰させます。現在交渉を進めている提携金融機関等からのATM受入手数料改定により、手数料水準低下に歯止めをかけるとともに、「+Connect」サービスの採用社数、利用件数を拡大し、ATM1台当たりの限界利益の底上げを図ります。また、AIを活用したATM機内現金圧縮、リテール口座獲得を通じた低コストコア預金調達を推進するとともに、長期固定金利による社債発行や、定期預金獲得により、金利上昇リスクを適切にコントロールし、資金調達コストや物価が上昇する中でも適正な利益を確保します。さらに、この6月からはファミリーマート店舗へのATM設置を開始しました。約4年間で約16,000台規模を展開するこの大型投資は、当社のトップラインを引き上げ、確実な利益成長につなげる強力な推進力となるはずです。

当期に約80億円の減損を計上したクレジットカード事業は、次期3か年での黒字化が至上命題です。本年8月に予定している新「nanacoクレジットカード」へのリニューアルを機に、会員数の純増トレンドへの回帰を図ります。同時に、広告宣伝費の最適化等により高コスト構造を改善するとともに、金融商品残高の効率的な積上げにより、収益性と健全性の両立を実現します。

海外事業では、2025年度、米国子会社が計画を上回る数値を達成し、力強い利益貢献フェーズに入りました。一方、インドネシア、フィリピンでは、競合激化等により業績が伸び悩んでいます。今後は、国ごとの投資収益率を精緻に見極め、不採算ATMの機動的撤去・再配置を行うなど、資本効率に軸足を置いた厳格な事業運営を行うと同時に、現地パートナーと連携を強化しつつ、各国特有のビジネス環境、ニーズを踏まえた新たなサービスの開発や、“Beyond ATM”といった新たなビジネスモデルの可能性を探り、セグメント全体の利益水準を引き上げます。

また、不正検知・フィッシング対策を担うACSiONや、為替取引分析業の許可を有し、AML対応や事務受託を担うバンク・ビジネスファクトリーといった当社の国内グループ会社も、金融犯罪の深刻化やサイバー犯罪の高度化等を背景とする金融機関からの強いニーズに応える形で、手数料ビジネス拡大を図り、連結での収益性向上につなげていきます。

持続的成長を支える資本調達の新たな選択肢

セブン&アイ・ホールディングスからの非連結化と伊藤忠商事との資本業務提携、クレジットカード事業の減損計上、2026年6月から開始したファミリーマート店舗へのATM設置は、いずれも、当社が今後非連続な成長を遂げるための布石です。

まずは、既存事業の収益性改善が最優先ですが、今後も、当社の強みを活かしながら飛躍的な成長が見込める機会があれば、あらゆる可能性を追求していきます。当社の連結自己資本比率は29.91%と国内基準を大幅に上回っていますが、成長に向けあらゆる可能性を模索するには、急激な環境変化が起きようとも盤石な財務基盤を維持し、成長に向けたリスクマネーを機動的に調達できる選択肢を確保する必要があります。そこで2026年の定時株主総会で、新たな資本調達選択肢として優先株式の発行枠を設ける定款変更を行いました。これは、普通株式の新規発行による既存株主の皆さまの保有株式価値やEPS(1株当たり当期純利益)の過度な希薄化リスクをコントロールしつつ、大型投資や規制環境の変化等により自己資本の拡充が必要と判断されるタイミングで、機動的な資本調達を可能とする戦略的な枠組みです。成長投資の推進と株主価値の保護を両立させる、当社の最適な資本アロケーションを支える基盤となります。

株主・投資家の皆さまへのメッセージ

2026年度は、「成長軌道への回帰に向けた再出発」の年です。企業価値向上には、徹底した収益構造改革により、資本コストを大きく上回るリターンを創出し、プラスのエクイティ・スプレッドを持続的に拡大させることが重要です。そのためには、成長投資と株主還元の最適なバランスを確保することが不可欠です。

成長投資の最優先課題は、トップラインを非連続に引き上げるファミリーマート店舗へのATM設置を中核とする国内ATMプラットフォーム事業への投資です。さらに、競争優位の源泉となる「+Connect」基盤の拡充等、ソフトウェアへの投資も継続します。これら先行投資が将来の強固な収益基盤創出へと結実するのです。

一方、株主の皆さまへの還元については、一時的な利益変動に左右されることなく、実額としての年間配当金額に配慮しつつ、連結配当性向「40%以上」という基本方針を、安定的かつ継続的に維持していきます。2025年度は減損損失等の計上によりEPSが低下しましたが、実額としての還元水準は維持しました。次期においても、年間配当は11.00円(予想配当性向75.5%)を据え置く方針です。強固な営業キャッシュ・フローと蓄積された利益剰余金を背景とした還元余力に懸念はありません。

今後も、株主・投資家の皆さまとは、透明性の高い対話(エンゲージメント)を真摯に行っていきます。皆さまにおかれましては、セブン銀行の新たな飛躍に向けた挑戦に、引続き変わらぬご支援とご期待を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。