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変化をチャンスと捉え、
革新を続けるセブン銀行の挑戦

25年の感謝とともに、30周年に向けてノウハウと経験を継承。確かな布石を打ちながら、着実に次の成長ステージへと進み、新たな価値創造に挑戦していきます。

株式会社セブン銀行代表取締役社長
松橋 正明

松橋正明

「コンビニにATMがあったら」からはじまった25年。原点にあるのは「小売のDNA」

2026年4月、当社は2001年の設立から25周年の節目を迎えました。「コンビニにATMがあったらいいのに」─ このシンプルなお客さまの想いから始まった当社は、前身のアイワイバンク銀行時代から四半世紀にわたり、お客さま、株主さま、提携先さま、ATMを設置いただいている店舗さまなどさまざまなステークホルダーの皆さまのご支援により、コンビニATMを社会インフラとして定着させることができました。改めて深く感謝申し上げます。

振り返ると、もっとも印象的なのは「創業3年以内の黒字化」という目標を果たすべく、必死に挑戦し続けた日々です。達成できなければ存続が危ぶまれる中、支えとなったのは、創業時に多大なご指導をいただいた故鈴木敏文氏(セブン&アイ・ホールディングス名誉顧問)の「銀行の概念ではなく、小売の概念で考える」「常識を捨てる」「お客さまの立場に立つ」という教えです。その言葉を胸に、提携先の開拓やシステム開発、オペレーションの再構築を全力で進めた結果、たくさんのお客さまに支えられ無事に黒字化を達成することができました。この教えが今日まで続く当社の原点であり、変わらぬDNAとなっています。

2007年には47都道府県へのATM設置完了と同時に、海外発行カードへの対応、視覚障がい者の方々向けの音声ガイダンス、電子マネーへの現金チャージなど、従来のATMの発想にはない付加価値の高いサービス開発に挑みました。このときに生みだされた当社ならではの差別化の素地が、現在の「+Connect」(プラスコネクト)サービスとして結実しています。

中期経営計画の振り返り ─
多角化の土台を築き、事業の磨き上げを収益化へつなげる

こうした挑戦を重ね、キャッシュレス化が進む中でも、着実にATM総利用件数を伸ばしてきました。しかし、ATM事業に偏った収益構造では今後の成長は限定的と捉え、2021年度より進めてきた前中期経営計画では、二つの成長戦略の柱を掲げました。一つはATM事業を現金プラットフォームからサービスプラットフォームへ進化させること、もう一つはATMに次ぐ成長領域を拡大し、事業ポートフォリオの多角化を図ることです。

前中期経営計画は2025年度をもって最終年度を迎えました。連結経常収益2,500億円、連結経常利益450億円、ROE8%以上という財務目標は残念ながら未達となりましたが、連結経常収益は2,200億円と過去最高を更新し、複数の事業で相応の収益規模を確保するなど、多角化を着実に進めることができました。

基幹事業である国内ATM事業は、台数・利用件数ともに想定以上に堅調です。多様な決済サービスへの現金チャージに加え、マイナンバーカードの手続きや「スマホATM」などの提供サービス拡充により、2025年度のATM総利用件数は11億2,200万件と過去最多となりました。2023年9月に開始した「+Connect」サービスは、2026年3月時点で51社に採用いただいています。「+Connect」の「ATM窓口」サービスは、提携先の合理化・デジタル化への貢献をご評価いただき、第5回日本サービス大賞・総務大臣賞を受賞できました。こうした当社ならではのユニークかつ磨き込んだサービスを通じて、導入いただいた提携先さまのDX戦略を支援し、その先の個人のお客さまの利便性向上にもつなげています。

多角化を狙ったリテール事業・海外事業は、当初の計画よりも収益拡大に時間を要しています。リテール事業では、ローン残高をほぼ計画線まで積み増した一方で、口座獲得は「金利ある世界」での競争激化もあり、期待した成果には届きませんでした。クレジットカード事業も、多様な決済手段と競合する中で思うような結果には至りませんでした。熾烈な競争環境ではありますが、当社グループならではの強みに磨きをかけ、得意とする顧客層に的を絞って口座・ローン獲得に取組んでまいります。そして、2026年夏に予定しているクレジットカードのリニューアルを転機に、黒字化を最優先で進めてまいります。

海外事業は、米国・インドネシア・フィリピンでの競合の出現などにより計画に遅れが生じましたが、苦戦していた米国の収益も改善し、計画期間中には新たに進出したマレーシアを加え、4社すべてで黒字を確保しています。市場認知の高まりとともに、ATMサービス基盤を活かした「小売×金融」サービスの具現化も見えてきました。

コンビニ業界標準のATMネットワーク、日本国内44,000台規模に

変化を成長の機会に変える ─ 2025年度に踏み出したその象徴的な一歩が、新たなパートナーシップです。2025年6月、当社は株式会社セブン&アイ・ホールディングスの連結子会社から、持分法適用関連会社となりました。

そして2025年9月、伊藤忠商事株式会社との資本業務提携契約の締結、ならびに株式会社ファミリーマートとのATM設置についての基本合意契約の締結を発表し、2026年3月にファミリーマートとのATM設置契約を正式に締結しました。6月からは全国のファミリーマート店舗へのATM設置を順次進めており、4年で約16,000台を導入予定です。完了時にはセブン-イレブン店舗をはじめ、すでに展開している28,000台以上と合わせ、当社の国内ATMプラットフォームは44,000台規模に拡大します。極めて大きな規模となりますが、これは単なる台数の拡大ではなく、お客さまにとって身近で便利な存在であり続けることと、事業会社として利益を生みだしていくこと、その両立を追求する取組みです。

この提携は、私が長年大切にしてきた お客さま、提携先さま、ATMを設置いただいている店舗さま、そして当社自身が、それぞれメリットを享受しながら、ともに成長していくという発想の実現を一段階引き上げる機会となりました。お客さまは、当社ATMの便利な機能をより身近で広くご利用いただけるようになります。提携先さまは、自社保有から「サービス接続型」への切り替えにより、全国規模のリアルな顧客接点を活かして銀行・行政機関・学校などで幅広いサービスをご提供いただけます。ATM設置店舗の皆さまには、規模のメリットを活かしたサービス拡張により、来店機会の創出など、店舗価値の向上につなげていただけます。ATMネットワークの拡大は、これまで設置にご協力いただいてきた店舗の皆さまに支えられて実現できたものです。ネットワークが広がっても、皆さまとともに歩んでいく姿勢に変わりはありません。そして当社は、規模を活かした運営の最適化により、収益の拡大と利益率の改善を両立してまいります。

新たに3か年見通しを発表

2026年5月の決算発表に合わせて、新たな3か年見通し(2026~2028年度)を公表しました。2028年度に経常収益2,800億円、経常利益400億円、ROE8%以上を目標としています。

増収・増益基調への回復を最優先課題として、トップラインと利益率・効率性の向上に注力し、財務目標の早期達成に向けてさまざまな取組みを進めていきます。

収益の柱となるATMプラットフォーム事業は、「+Connect」サービスの認知を広げ、金融機関だけでなく行政機関、事業法人にも顧客基盤を構築し、幅広い利用見込層へのアプローチにつなげていきます。

リテール事業では、強みを活かして利便性の高いサービスを提供し、稼働口座の獲得とローン残高の伸長、クレジットカード会員数の純増を目指します。さらに、国内グループ会社のバンク・ビジネスファクトリーとACSiONが提供する専門性の高い法人向けサービスも、社会の安心・安全を支える基盤となります。

複数の重点施策の中で、私が特に未来への布石として大きな意義を感じているのが、「ファミリーマートへのATM展開」と「海外事業の進化」です。

ファミリーマートへの展開は、面の拡大にとどまらず、当社のオペレーションインフラを刷新する機会でもあります。自社最適化から業界最適化へと舵を切るべき局面と捉え、事業パートナーとともに、現金デリバリーインフラの再構築を含む新しい仕組みを検討してまいります。あわせて、様々な金融サービス分野での協業も検討しています。

海外事業は、4カ国それぞれのニーズに応えながら、ユニークな存在へと進化する重要なフェーズに入りました。アンバンクト層(銀行口座を持たない人々)向けウォレットとの連携、本人認証基盤を活かした口座開設サービス、小売との連携によるデータ活用など、すでに各国で取組みが進んでいます。単なるATMの設置にとどまらない、各国の社会変化に対応した独自のサービスをともに作り上げていきます。

当社グループ全体で、独自の強みを活かした新たなサービスや新市場での顧客獲得と収益向上を実現し、着実に増益体質への転換を図っていきます。

2050年を見据えた自己変革で、新しいサービスの構築を

足元で大きな布石を打つ一方、私たちの視線はさらに先の未来にも向いています。2025年秋から社内では、2050年を見据えた長期ビジョンの策定に取組んでいます。

企業を取り巻く環境は激変しています。生成AIの急速な進化と普及、キャッシュレス決済比率の上昇とステーブルコインのような新たなソリューションの登場、そして「金利ある世界」の到来。これらは一見、当社にとって脅威になり得る変化です。

しかし、「変化は常に進化のチャンス」と捉え、対応することで自分たちのサービス力をより高めていきたいと考えています。たとえば政策金利の上昇は、現金調達コストの増加という側面がある一方、金利反応型のサービスやストック型ビジネスへの発想転換のチャンスでもあります。日々進化するテクノロジーへの対応は、サービス開発力の強化にもつながります。対外的な進化はもちろん、社内の業務改革にも積極的に取組んでまいります。

当社の強みは、ATMというリアルな接点を通じて、安心・安全な金融サービスをお届けできることです。私はこの強みを活かした構想を練っています。具体的には、顔認証入出金サービス「FACE CASH」を、ATM取引だけでなく、家や車の購入のような重要な意思決定の場面で活用するというものです。昨今、生成AIの進化に伴うディープフェイクやサイバー犯罪の巧妙化により、金融業に求められる安全性への期待は格段に高まっています。当社ならではの高いセキュリティに守られたリアルな接点を活かし、より安心・安全な多要素認証に対応する新しい本人確認の仕組みづくりに挑戦したいと考えています。

当社が目指す金融サービスは、銀行取引やカード決済を使っていることを意識しなくても、必要な金融機能が自然に利用できる世界です。その実現に向け、当社は新しくBaaS事業に参入し、ATMネットワークや口座・ローンビジネスに加え、セブン・カードサービスの持つ顧客基盤を活かし、グループ一体で新しい金融体験を創っていきます。

かつて、企業が繁栄を保てる期間は30年ほどといわれていました。変化が加速する今後は、その期間がさらに短くなるでしょう。だからこそ当社は、「かつては銀行だった」といわれるような抜本的な自己変革を、これからの最重要テーマと位置付けています。ATMというリアルな接点を起点に、多様なステークホルダーが共創する未来を描き、実現してまいります。

パーパスを起点に、社員とともに育つカルチャー

こうした成長戦略を支えるのは、ほかでもない社員一人ひとりの力です。日々の経営判断で大切にしているのは、当社のパーパスである“お客さまの「あったらいいな」を超えて、日常の未来を生みだし続ける。”に込めた、既存の概念にないものを作り上げ続ける姿勢です。新しいものを生みだすには難題も伴いますが、それを一人ひとりが乗り越えていく過程こそが、事業の競争力と社員自身の成長を同時に生むループになります。

社内では独自の生成AI環境を構築し、社員の9割が日常的に利用することを目標に掲げています。もっともデジタル化が難しいとされる事務部門でも、着実に利用が進んでいます。今後はデータやAIをさらに使いこなして、業務そのものを再構築してまいります。

組織面では、エンゲージメント施策の重心が「働きやすさ」から「働きがい」へと移行しています。2025年度は、若手社員の実体験から評価いただいた「CSA賞」※1を受賞することができました。また、「DX銘柄2026」※2の選定でも、幅広い部署の取組みが大きな成果につながりました。こうした社員の成長そのものが、企業価値を支える源泉となっています。

  • ※1ニュースリリース
  • ※2ニュースリリース

続けられるからこそ、社会を変えられる。本業を通じたCSV

社員の成長は、社会への貢献にも直結します。本業を通じた共有価値の創出(CSV)は、当社が長く取組んできたテーマです。一時的な社会貢献活動にとどまらず、事業やサービスとしてできる限り収益化を図ることで持続可能な形で社会課題の解決に貢献する。これが当社のCSVのあり方です。

現在、特に力を入れているのが外国人居住者向けの口座サービスです。ATMで原則24時間365日、入国後すぐに口座開設でき、デビットサービスを提供できる仕組みとなっています。また2026年7月に、おこづかいを通じてお金の意味や使い方を理解できる、親子向けの教育サービスもリリースしました。小さなステップを積み重ねながら、今後も社会価値の創出を続けてまいります。

ステークホルダーの皆さまへ

私が常々口にしている言葉に、「小さくとも、人類の進化に貢献する」というものがあります。新しいことは、一足飛びにうまくいくとは限りません。だからこそ、小さな一歩を着実に積み重ねながら、社会に新しい価値を届けていきます。お客さまには、「これが欲しかった」と感じていただけるサービスを生みだし、生活に必要なモノ・コトがコンビニに来ればワンストップで完結する世界をお届けします。店舗や事業パートナーさまとは、自社最適化から業界最適化へと発想を広げ、業界全体の合理化と新たな価値創造をともに進めてまいります。地域社会の皆さまには、暮らしに密着したサービスを、コンビニという身近な拠点から広げてまいります。そして株主・投資家の皆さまには、まずはトップラインと利益率の向上にこだわり、3か年見通しで掲げた2028年度の財務目標 ─ 経常収益2,800億円、経常利益400億円、ROE8%以上 ─ の達成を目指します。少しでも早く、財務面も含めてご期待にお応えできるよう努めてまいります。

当社はこれからも変化を恐れず、革新を続けてまいります。25年の感謝を胸に30周年、そしてその先へ。確かな布石を打ちながら、日常の未来を生みだす存在であり続けます。皆さまの一層のご支援を、心よりお願い申し上げます。