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パーパスの実現を目指し、日本初、世界初の価値を生みだし続ける。
時代の転換期においても「ユニーク」な存在であり続けます。

株式会社セブン銀行代表取締役社長
松橋 正明

松橋正明

パーパスを具現化した新たなサービスが続々

2024年度は、2021年4月に掲げたパーパス“お客さまの「あったらいいな」を超えて、日常の未来を生みだし続ける。”に込めた想いが、具体的なサービスとしてお客さまのもとに次々と提供できる段階に入りました。

2019年9月より導入した「第4世代ATM」では高機能を活かし、あらゆる手続きや認証がATMで可能となる「+Connect」(プラスコネクト)サービスを提供しています。2025年2月には新たな金融体験としての顔認証入出金サービス「FACE CASH」(フェイスキャッシュ)を開始しました。また、給付金などを現金で受取れる「ATM受取」の導入自治体も拡大しており、ATMを起点としてお客さまや地域社会に寄り添うサービスを次々と生みだしています。

さらに、日本で働く外国人の方々が、条件を満たせば来日6カ月未満でもATMで口座開設できるサービスを2024年12月に始めました。日本の金融業界では珍しい10言語対応のコンタクトセンターも整備しています。国内の人口減少に伴う、外国人労働者の増加が今後も見込まれる中、外国人が日本で安心して暮らせる環境を整え、誰もが活躍できる社会づくりに資するサービスをこれからも開発していきます。

今、世の中は猛スピードで変化しています。すべての産業が、消費者ニーズや販売チャネルの多様化、原材料・人件費の高騰に直面し、DX(デジタル・トランスフォーメーション)による高度化や差別化戦略を求められています。金融業界も例外ではありません。キャッシュレス決済比率は40%を超え、「金利のある世界」の中で預金獲得競争が激化、さらには異業種も絡んだ合従連衡が進んでいます。

小売業発の金融機関である当社は、コンビニATMを展開するユニークなビジネスモデルを活かして多様な社会課題を解決し、お客さまに新たな価値を創造するため、タイムリーに業界初、日本初、世界初のサービス創出に挑み続けています。

連結経常収益は過去最高も利益面に課題。中期経営計画最終年度へ

2024年度はATM利用件数の伸びに加えて海外事業が好調だったこと、さらに、2023年7月に連結子会社化したセブン・カードサービスの収益が年間を通じて計上されたことで、連結経常収益は2,144億円と初めて2,000億円を突破し、過去最高となりました。一方で、連結経常利益は302億円となり、ピークに比べると100億円ほどの減少となっています。これまで続けてきた成長投資に対し、コスト先行になっている部分があり、2024年度全体としては、利益面を中心に厳しい状況となりました。

2025年度は中期経営計画最終年度です。現在の業績予想では、2025年度は連結経常収益2,160億円、連結経常利益245億円としており、当初の収益目標2,500億円、利益目標450億円にまだ達していない状況です。2025年度はこのギャップを少しでも埋めるために、事業全体での収益性向上に注力し、主軸であるATM事業を次の成長ステージへと引き上げるとともに、海外事業とリテール事業については次の収益の柱となるよう事業基盤を固めていきます。数年以内には当初の収益目標、および利益目標を実現できるようにしっかりと取り組んでまいります。

また、当社は2025年6月20日に、株式会社セブン&アイ・ホールディングスの完全子会社である株式会社セブン-イレブン・ジャパン、株式会社イトーヨーカ堂、株式会社ヨークベニマルの3社等から約508億円相当の自己株式を取得しました。この結果、当社はセブン&アイ・ホールディングスの子会社ではなく、持分法適用関連会社となりましたが、今後もセブン‐イレブン店内に設置したATMを中心に、密に連携を図りながら事業を拡大していく方針に変わりはありません。一方、親子上場関係解消を機に、当社経営の独立性・中立性がより一層高まることから、これまで以上に柔軟な事業戦略を推進していけるものと考えています。なお、今回取得した自己株式については、今後の経営環境の変化や、経営戦略を踏まえ、機動的に活用していく方針です。

これからも当社独自のユニークな強みを活かし、パーパスを軸とした成長戦略を着実に進展させ、持続的成長と企業価値の向上に取り組んでまいります。

質の向上で国内ATM業界をリードし、面の拡大を追求

主力である国内ATM事業は、現金の入出金を行う“現金プラットフォーム”から、お客さまの生活に密着した“サービスプラットフォーム”である「ATM+」(プラス)へ進化中です。2025年3月には「第4世代ATM」の全国約28,000台の入替・設置が完了し、これにより、前述の「+Connect」サービスを全国で均一に展開できる体制が整いました。銀行支店に代わり窓口業務を行う「ATM窓口」サービスと、郵送に代わってお知らせ業務を行う「ATMお知らせ」サービスを導入している提携先は20社を超えて拡大を続けており、コンビニが銀行支店の役割を果たすようになってきました。

また、スマートフォンだけで現金の入出金ができる「スマホATM」が浸透しつつあり、ATMの便利な活用事例が広まっています。こうした、お客さま、提携先さまのニーズに合わせた新機能を継続的にリリースするとともに、ATM台数を伸長させることによって、日本全体のATM台数が減少する中でも当社ATMのシェアは15%以上に拡大しました。引き続きATMのネットワークを拡充し、「ATMと言えばセブン銀行」と言われるよう努力することで、基幹事業である国内ATM事業の競争力をさらに強化してまいります。

小売業発の金融機関ならではの発想で利便性の高い金融サービスを提供

2024年度は、当社グループとセブン‐イレブンのシナジーを追求し、より買い物に便利な決済へとサービスを強化した1年でもありました。セブン銀行口座、クレジットカード「セブンカード・プラス」、電子マネー「nanaco」と、セブン‐イレブン等で利用される「7iD」がシームレスにつながり始めています。「セブンカード・プラス」の会員獲得施策では、20~30代の利用者の増加、セブン‐イレブンでの購買単価、利用回数の向上につながっています。「7iD」の購買データをマーケティングや個人ローンの与信に活用する取組みも開始し、個人向けカードローン残高は2025年度末の目標である800億円を達成する見込みです。今後も小売×金融の強みを活かしたサービス展開を進めてまいります。

海外で2万台以上のATM網を展開、さらなる収益多角化へ

重要な成長戦略の一つである海外市場の開拓も着実に進んでいます。先行する米国、インドネシア、フィリピンでは、2024年度末でATMは合計21,000台超、総利用件数は5億件超と順調に事業規模を拡大しました。海外事業全体の経常収益は435億円と当社グループ連結経常収益の約20%を占め、事業ポートフォリオの多角化にも貢献しています。先行投資により、利益面で後ずれはしていますが、2025年度には3社とも通期黒字化を達成する見込みです。2025年1月に事業を開始したマレーシアを含め、日本でのノウハウを活かし、各地域のニーズにあったサービスを提供し、さらに利益率を高めていきます。

金融インフラの利便性・安心安全を社会に届ける

法人向け事業の、株式会社ACSiON(アクシオン)は金融機関向けのフィッシング対策サービスで業界シェアを拡大しています。バックオフィスの分野では株式会社バンク・ビジネスファクトリー(BBF)が金融機関の事務受託やAML/CFTのコンサルティングなど信頼性の高いサービスを提供しています。当社事業から得られたノウハウを活用し、セキュリティ技術を磨き上げ、安心・安全を守る事業パートナーとして、金融業界を支えていきます。

AIを使い自ら業務を改革する社員たち。人が育ち、会社が育つ。「あるべき姿」がみえてきた。

自律的に考え挑戦するカルチャー

当社のパーパスにある“お客さまの「あったらいいな」を超えて”とは、お客さまがまだ気付いていない、顕在化していない価値を創り出していくということです。生活に密着した「コンビニ」という場でビジネスをしているからこそ、社会課題を把握し、発想を豊かにビジネスを創出できるのだと思います。そのために大切なのは、自律型人財のイノベーションマインドを育て、誰でも挑戦できるカルチャーを醸成させていくことです。

その一環として、業務評価の10%をイノベーション活動の成果とする「EX10」(エクステン)という取組みを続けています。この制度のもと、IT部門だけでなく、バックオフィス部門やコーポレート部門もAI・データ活用や、プログラミングの知識が少なくても容易に開発可能なノーコード・ローコードのアプリを自ら開発し、日々の業務を効率化しています。与えられた業務を「こなす」のではなく、社会の変化にあわせて業務を改革していくことが社員の役割になっています。これからはデジタルを使いこなすことは社会人の基本スキルという時代です。日々の業務はできるだけAIに任せ、人間はAIにはできないクリエイティブな業務に専念する姿が理想です。

「EX10」の成果として、常に新しいことに挑戦するカルチャーが定着しました。経営の指示を受けて動くのではなく、能動的に自ら走り出す社員が増え、その結果が業務の多角化・高度化につながっています。社員の成長が、企業の成長を導いているのです。当社が目指してきた「あるべき姿」が実現できつつあると感じています。

サステナビリティの取組みにも真正面から取組み、社会課題の解決にも貢献。

成長戦略とつながるサステナビリティ推進

セブン銀行グループが目指すべき姿とは、常に新しい「便利」をお客さまに提供しながら事業成長を続けることです。少数精鋭の企業ゆえ、ITを駆使し合理性・効率性を極めて収益を高めていく。さらに、日本初、世界初の価値を生みだすユニークな存在であり続けるためには、チャレンジし続けることが大事です。また、当社は社員の8割が中途採用で成り立ち、多様な人財がそろっています。DEIが活きる環境と新たな挑戦を推奨する企業風土を確立することがイノベーションを生みだす力になっています。

事業拡大に留まらず、成長戦略とつながるサステナビリティ推進にも、企業の社会的責任として真正面から取り組んでいます。当社は重要な開発テーマの一つとして、ATMの消費電力抑制を進めてきました。第4世代では第3世代と比較して40%省電力化し、生産時やリサイクル時の環境負荷低減を進めました。今後は警備関連や保守点検関連のパートナー企業さまなどと連携した取組みも進めていきます。「保守点検サイクルの見直し」「インフラや物流の共通化」など環境負荷低減につながるオペレーションの検討のほか、各社の強みを活かして、本業を通じたより幅広い社会課題の解決につながる協業の形を一緒に検討しています。

事業パートナーさまと第9回 サステナブル・ブランド国際会議 2025 東京・丸の内に登壇

ステークホルダーの皆さまへ

社員に対しては朝礼などで必ず「社会変化に対応し、お客さまに評価される企業になろう」と伝えています。社員一人ひとりのチャレンジは、企業や社員自身の成長だけでなく、日本という国そのものの革新力につながることを社員には意識してほしいと思います。地域社会とお客さまに対して、当社の強みとユニークさを発揮しながら、日常の暮らしに寄り添うサービスをお届けすることを誓います。金融機関などのお客さまに対しては、未来をともに考える「共創」のパートナーでありたいと考えています。あらゆる産業の境目がなくなり大転換する中で、同じ未来を目指すパートナー企業と共創し、非連続の価値を生みだしていかなくては生き残れません。

当社は開業以来、お客さまと業界のニーズを発掘し、サービスを提供し続けてきました。今後もパーパスの実現に向けて事業を進め、日常の未来を生みだす存在であり続けます。

最後に投資家の皆さまへ。業績面でまだ十分にご期待に応えられていませんが、当社は確実に変わり始めています。過去を振り返れば「コンビニATM」が定着するまで多大な時間と労力を要しました。そして今、ATMそのものの価値の転換という大きな課題にチャレンジしている段階です。必ず新たな成長につながる道筋を明確に示し、当社グループの持続的な成長と還元を実現していきます。一層のご支援を賜りますようお願い申し上げます。