社長メッセージ

セブン銀行は「近くて便利」「信頼と安心」を実現するユニークな銀行を目指してまいります。

2020年度の振返りと業績レビュー
~国内はキャッシュレス化の加速により現金チャージ取引が大幅増
海外はコロナ禍においても堅調にATM平均件数は増加~

2020年度は、創業以来、初めて国内でのATM総利用件数が対前年比で約2%減少しました。キャッシュレス化の加速に伴い、銀行取引が大きく減り、スマートフォン決済事業者のチャージ取引が増えATM取引の業態別構成は大きく変化しました。当期は減収減益となり、従来型ビジネスの延長線で、成長軌道を描くのは難しくなったという点では、時代の転換点を迎え、いい意味での危機感が生まれたと認識しています。
一方、今回、チャージ取引の急拡大を目にして、デジタル社会への身近な入り口として、リアルな場所で、安心・安全かつ簡単に利用できるATMへの信頼が広く浸透していることを改めて認識することができました。 また、コロナ禍における外出自粛やテレワーク推奨等の生活様式の変化により、キャッシュレス化に相当の拍車がかかったとの印象の中でも、ATM総利用件数の落ち込みが約2%にとどまったという事実は、ATMという存在への期待を示唆しているとの感触を得ました。キャッシュレス化の中でも根強い現金ニーズにお応えし続けると同時に、新しい役割を担うことができるという手応えを感じられる1年となりました。
海外では、日本以上にキャッシュレス化が進んでいると言われる米国・インドネシアともに、コロナ禍においてもATM利用件数は堅調に推移しました。米国でATM運営事業を展開する連結子会社のFCTI,Inc.は、低採算ATMのリストラによる台数減少に伴い若干の減収となりましたが、経費も相応に抑制され、利益は大きく改善しています。インドネシアのPT.ABADI TAMBAH MULIA INTERNASIONAL(ATMi)はATM設置台数を200台から750台へ大きく増やし、大幅増収となりました。

事業環境の変化におけるリスクと機会
世の中の変化をいち早くチャンスとして捉える姿勢が社会インフラとしての使命を果たし新たなサービスを創出する原点

世の中の変化は、踏みとどまる者にとっては脅威ですが、可能性を追い求める者にとってはチャンスです。いかに変化の中にチャンスを見出し、柔軟かつ迅速に対応できるかに尽きると思います。
よく「キャッシュレスが進めばATMは不要になる」という話を耳にしますが、そうとは言いきれないと思います。自分自身を含め、一人ひとりの消費行動・決済行動から感じるのは、シーンやタイミング、気分に応じて、多様な選択肢を使い分ける時代になったのではないか、そして、自分の都合で選択できることが安心感につながるのではないかと思います。
この多様性を裏で支える一助を果たしているのが、当社ATMにほかならないと認識しています。実際、キャッシュレス化の入り口として当社ATMがその進展に果たした役割は大きく、安心・安全な機能提供と社会インフラ提供事業者としてのオープンスタンスで、協業展開を積極化したことにより、いち早くビジネスを軌道に乗せることができたと捉えています。
足許では、地方自治体のデジタル地域通貨やポイント還元、地元商店街とのキャンペーン等、キャッシュレス決済による地方創生が拡大する中、その展開エリアではATMのチャージ利用件数の急伸が見られ、引続き、キャッシュレス進展との架け橋的な役割を担っていけるものと確信しています。

中期経営計画 1.成長戦略
成長準備から第2の成長へ 将来の持続的成長に向けての積極投資を実施

変化から生まれるチャンスをしっかり捉え、「第2の成長」の実現に向け、その方向性を示す新たな中期経営計画(2021-2025)を策定しました。計画の柱は、①成長戦略、②社会課題解決への貢献、③企業変革――の3本です。
①成長戦略は、デジタル化社会における新しいATMの役割を生み出していく「ATMの進化」、海外展開を含む「事業の多角化」を両輪として、「本業を伸ばしつつ事業の多角化」を加速させていく方針です。圧倒的なATM網、銀行として培ってきた信頼性、グループ連携といった私たちが持つ強みを活用しながら、第2の成長の礎を確立します。
5年後の連結経常収益では中核領域のATMで1,000億円を維持しつつ、国内の金融事業・子会社、海外事業を合わせて1,700億円(2020年度約1,370億円)規模、連結経常利益では350億円を目指し、2026年度以降の利益の嵩上げと更なる成長加速に繋げる計画です。
そのため先行的かつ戦略的に投資を進め、中計期間5 年間で総額1,500 億円の投資を計画しています。

中核:ATMプラットフォーム戦略

銀行の合理化促進で店舗やATMを削減する動きが顕著な中、商業施設や公共施設等からATM設置依頼が増加しています。引続き当社ATM設置を検討いただける機会は増えるとの手応えを感じており、2021年度は国内550台純増に挑戦していきます。設置台数増を通じ面展開を強化するとともに、行政や医療でのデジタル化が加速する中で、マイナンバーカードとの連携や本人認証の領域、また金融犯罪対策等を含めたデータの利活用等を含め、従来のATMの概念を超えたサービスを創造することで利用機会を拡大し、ATMプラットフォーム事業の収益規模1,000億円を維持していきたい考えです。

成長:リテール戦略&法人戦略

「事業の多角化」については、従前より進めてきたセブン&アイグループとの連携強化とユニークな商品性の追求、外国人居住者の金融・生活を総合的にサポートし、選ばれるサービスの開発を進める「リテール戦略」。また、リアルタイム振込やATM受取といった現金の取扱いを中心とする決済ニーズに対応するB to B(直販ビジネス)、金融機能提供や事務・システムが一体となった受託ビジネスを展開するB to B to X(プラットフォームビジネス)を進める「法人戦略」。この2つの戦略を柱とし、更なる顧客基盤・業容拡大を目指します。
銀行が担ってきた信頼感のある事務や安全・安心な資金管理・移動、高度な認証やセキュリティ機能こそ、デジタル化社会に向かい、新しい金融・決済事業者が増加する今、もっとも活かすべき重要な機能であると確信しています。B to B to X(プラットフォームビジネス)は、こうした機能に磨きをかけ、社会全体の品質を維持・向上させていくことに新たなビジネスを生み出せるとの想いがその根本にあります。
金融機関が持つ機能を組合せ、より効率的かつレベルの高いサービスを金融機関のみならずさまざまな事業者に提供することで、当社は黒子役として、多様な事業者との補完関係をさらに広げていきたいと考えています。

海外戦略

FCTI, Inc.(米国)は引続き、低採算ATMの整理を続け、さらに利益体質への改善を図ります。ATMi(インドネシア)では大幅な台数増加、Pito AxM Platform, Inc.(フィリピン)では安定稼働を実現し、台数拡大と提携行追加を着実に進めることで、各地域におけるATMネットワークを構築していきます。
その後、ATMビジネスを入り口として、ご利用いただく方々のデータ等を活用した多層的な金融サービスの展開につなげるとともに、新たな国でのATM展開、グローバルなマネートランスファー(海外送金)を視野に入れた取組みも検討していきたいと考えています。

中期経営計画 2.「社会課題解決への貢献」
5つの重点課題への取組みを足がかりに社会課題解決を持続的成長の礎に

まずは私たちが持っている強みや資源を活かして貢献できることは何かを考え、策定した5つの重点課題(マテリアリティ)をしっかり実現していくことが、その第一歩です。
その上で、各種業務を委託している事業パートナーとの協働により、現金の監視・管理、ATMの故障の予兆管理等でのAI活用もさらに進化させ、ATM周りのCO₂排出量削減を積極的に進めていきます。また、現在第4世代への入れ替えを進めている第3世代ATMの100%リサイクルの徹底により環境負荷の低減に取組んでいるほか、セブン&アイグループで推進している「グリーンチャレンジ2050」にグループの一員として積極的に参画し、CO₂排出実質ゼロ、社会課題解決およびSDGs達成へ向け貢献していきたいと考えています。
持続可能な社会を実現していく上でサステナビリティは、企業として最重要課題のひとつとして取組むべきものと考えています。今般、改めて会社の重要な経営戦略の根幹と位置付け、社長・役員のほか従業員や外部有識者もメンバーに加えたサステナビリティ委員会を設置し、更なる検討・議論を進めていきます。

中期経営計画 3.「企業変革」
新たな環境に適した組織への変革を目指す CXプロジェクトを推進

環境に応じて会社も変わる必要がある中で、特に働く人たちの意識の変化、テクノロジーの進化という視点から、「人材・組織・企業文化」と「データを軸としたビジネスモデル・ビジネスプロセス」の両面における企業変革に向け、CX(CorporateTransformation)プロジェクトを立ち上げました。
セブン銀行の強みは、変革を恐れずチャレンジする文化とそれを支える人材にあると思っています。ここに圧倒的なATM網とそのノウハウ、銀行としての信頼性を掛け合わせ、これまでになかった金融サービスを創造する、ユニークな存在であることこそが、持続的成長の源泉です。この強みに磨きをかけていくため、自らスキルアップやキャリア形成、働き方を選択できる自律型人材が活躍できる組織へと一段階高みを目指したいと考えています。
現在、社内コミュニケーションを強化する中で、活発化させてきた社内セミナープログラムや社内で起きた出来事、中期経営計画や決算発表、各部署の業務計画説明、創業来の20年間で経験し、乗り越えてきた、東日本大震災や海外偽造カード、スキミング事件等の危機対応の歴史を語るコンテンツ等のアーカイブ化を進めています。そうした多様なプログラムをメニューとして提供し、自ら学び、目の前の業務だけでなく、会社全体・他部署への関心も醸成しながら、履修研修実績から見られる本人の指向等を考慮した人事配置・人材育成につなげていく考えです。
また、デジタル化社会を迎えるにあたり、開業時より堅持してきた「絶対に止めずに、かつ、安全・安心に利用できる」の実現に最も効率的に設計されていたATM運用の仕組みをさらに進化させ、多様なデータを犯罪対策等のセキュリティ領域をはじめ、ビジネスそのものや、ビジネスプロセスに活かしていくこと、つまり、従来とは違った形でデータを利活用・分析することの検討も進めていきます。

コーポレートガバナンス
取締役会の議論の活性化とサクセッションプランの一環となるコミュニケーションの機会づくりを強化

2019年度より執行を兼務する取締役は代表取締役の2名に限定し、2020年度は①取締役会の活性化、②サクセッションプランの一環となる社外取締役と次世代幹部候補との対話、コミュニケーションの機会づくり、に注力しました。①取締役会の活性化では、決議事項に割く時間をできるだけ効率化して戦略ディスカッションの時間を増やし、今回の中期経営計画もその過程で議論を重ねてきました。②の対話の機会づくりは、執行役員が社外取締役に対し、自身の担当する業務説明を行い、議論する機会を設けました。これは社外取締役から好評を得ましたので、更なる拡大も検討しながら、継続していきます。

ステークホルダーの皆さまへのメッセージ
お客さまの「あったらいいな」を一つひとつ実現し、独自の新しいサービスを創出・定着させてきた20年の歴史で築かれた自信を糧に、更なる共創価値の創造に挑み続けます

セブン - イレブンへのATM 設置からスタートし、海外で発行されたカードの利用、ATM での海外送金もできるようにしました。スマートフォンでのATM 入出金、電子マネー・スマホ決済アプリのチャージ、また口座を介さず企業から個人ヘ送金可能なATM 受取、そして、マイナポイントや健康保険証利用の申込みといったマイナンバーによるATMでの手続きも実現してきました。
もちろん、取組みの中には失敗もありました。しかし、それでも屈することなく、他が手掛けないお客さまの「あったらいいな」に挑戦し、実現してきたことは、私たちの大きな自信です。
20周年の節目で転換期を迎えたことを機に、改めて私たちは何のために存在しているのかをしっかりと再定義する必要があると考え、「お客さまの『あったらいいな』を超えて、日常の未来を生みだし続ける。」というパーパス(存在意義)の策定に至りました。新しい社会的価値、ユニークさを追求していくことは、無限の可能性を拓く心地よさがあり、他を追随する窮屈さもありません。これを続けていくことが、私たちの存在価値そのものであり、その姿勢を貫く限り、社会に必要な存在であり続けられると考えています。
2021年度もコロナ禍は継続、現在の消費行動やキャッシュレス決済の動きは続いていくと想定しています。業績は、単体で減収となるものの、海外および国内子会社群の業容拡大を見込み、連結ベースでは増収計画としています。償却負担、システム更改に伴うシステム経費増加等による減益を予想する中でも、縮小均衡に陥ることなく、持続的成長に向けた投資を確実に継続していきたいと考えています。そうした戦略的投資を営業キャッシュフローでしっかりと賄いながら、実額にも配慮しつつ、配当中心の安定的・継続的な株主還元を維持していきます。
今後も豊かさの象徴とも言える多様性は重要と考えており、他社を追随するのではなく、自らの強みであるATMインフラを磨き上げながら、「『近くて便利』、『信頼と安心』を実現するユニークな銀行」として、お客さまやお取引先、事業パートナー、従業員を含めたすべてのステークホルダーの皆さまと新たな社会的価値の創造に挑戦し続け、第2の成長を具体化していきます。引続き、ご意見、ご期待をお寄せいただくとともに、ご支援いただきますようお願い申し上げます。

株式会社セブン銀行 代表取締役社長

舟竹 泰昭