社外取締役 座談会
セブン銀行の真の強みを磨き、さらなる成長へ着実な一歩を
社外取締役5名が示す課題と期待
(左から)社外取締役(独立役員) 渋澤 健
社外取締役(独立役員) 木原 民
社外取締役(独立役員) 高藤 悦弘
社外取締役(独立役員) 松尾 美香
社外取締役(独立役員) 平子 裕志
Q.1 取締役会の実効性について
当社の取締役会の実効性評価、およびご自身の専門性を今後どのようにガバナンスや経営に活かしていくかをお話しください。
渋澤:私は、2025年度に新たに社外取締役に就任しました。当社の社外取締役が忖度なく自由に発言できる雰囲気を評価しています。当社では取締役会のほかに役員ディスカッションの時間が設けられており、決議事項ではない段階から自由に意見交換ができる仕組みが機能しています。今期実施された社内見学では事業パートナーの取組みやセキュリティ対策の現場を直接見ることができ、「見えない部分」に丁寧な取組みがなされていることを改めて実感しました。私の役割は長期投資の視点、グローバルの視点から、10年・20年先を見据えることです。全くの忖度なしで、独立した立場から意見を述べています。
松尾:社外取締役が鋭い質問をし、社長や会長だけでなく執行担当者がきちんと答えてくださる透明性を高く評価しています。多数の執行役員が毎回入れ替わって説明してくださり、本当に多くの方が現場で頑張っているのが感じられる銀行だと感じます。私は、唯一のリテール銀行実務経験者としての知見を活かすとともに、グローバルな視点から海外ビジネスの厳しさについても積極的に発言しています。
平子:事前説明がないことは、ある意味で「予定調和」のないところが良いのですが、一方で事前インプットの内容によって、議題をどこまで深く議論できるか決まると思います。取締役会の実効性を高めるためにも、この場に至る前に、「何をどう議論したのか、どういう成果に結びついたか」を明確にするようにお願いしています。個別案件の詳細より全体戦略の俯瞰から入っていくプロセスが、より求められていると感じています。また、社員一人ひとりは若く多様性があるので、その力を十分に活かしていくことが必要だと考えています。経営者としての経験から、グループベースでの人的資本経営について、取締役会でもっと深く議論していきたいと思っています。
木原:私も同意見です。取締役会での議論を、細かい施策レベルから、会社の戦略といった大きなテーマにシフトさせていく必要があります。年度開始前に今期議論したいテーマを事前共有し、準備期間を設けることが有効だと思います。私は、特にデジタル、AI/ITの分野を監督していきたいと考えています。当社では、生成AI活用方針をかなり早くから公開し、DX銘柄にも選定されています。AIや基幹システムへの積極的な投資に対し、企画段階で目標数値を定めて効果をしっかり刈り取るという課題はありますが、一方でテクノロジーの力で企業価値を上げていくことについては、ブレーキをかけずに応援していきたいです。
社外取締役(独立役員) 高藤 悦弘
高藤:私が着任した4年前と比べると、細かい執行側の話題でなく戦略的な議論をする時間が増え、確実に深みが増してきたと評価しています。戦略議論をする際は、現実的な課題と全体のバランスがとても大事なんですよね。私は30代から組織のマネジメントに携わり、「修羅場」と呼べるような経験をいくつもしてきました。組織が陥りやすい判断の罠、個人が頭で理解していてもその罠に陥る危うさを、肌で感じてきた経験から発言しています。部門長が利益の数字に対し自ら責任を持って取組んでいく組織文化の醸成に貢献したいと考えています。
Q.2 伊藤忠商事との資本業務提携について
資本関係の変更に伴い、セブン&アイに加え、伊藤忠商事が大株主となりました。この点についてどう捉えていますか。
高藤:伊藤忠商事に関しては、当社が最初から目指していた対等な関係性での資本業務提携が、ファミリーマートへのATM設置により、実感を持った形で実現できたと考えています。ATM事業での協業という大きな柱があってこそ、他の事業も進められるわけで、非常に良い形で動き出したと思っています。
平子:「親子上場」が解消され、新たに2社の大株主が存在する形となりました。我々社外取締役の役割は、何よりも「少数株主の利益をどう守っていくか」にあります。株主間の利益相反については、これまで以上に注視していく必要があります。2026年6月の株主総会では、両社から取締役が着任しました。今後は、それぞれが互いに刺激し合うことで、経営の議論がさらに活性化するはずだと大きく期待しています。
松尾:伊藤忠商事という、非常にビジネスに長けたカルチャーをお持ちの株主が入ることで、執行陣がどれだけ刺激を受けてチャレンジしていけるのか、とても楽しみです。同時に、少数株主の皆さまのために、間違いのない判断をしていかなければならない、という強い責任も感じています。
社外取締役(独立役員) 木原 民
木原:この提携が次の当社の成長に寄与することを、企業価値向上という形で実現していかなければなりません。そのための核となる「ATM+(プラス)」のコンセプトを改めて見直すと、「さまざまなビジネスパートナーとともに、未来のイノベーションを、みんなのものにするプラットフォーム」と書いてあります※。今回、まさに非常に強力なビジネスパートナーと組むことができ、「ATM+」がインフラとしてさらに幅を広げたと言えます。ここからしっかりとマネタイズし、本当の成長に結びつけていくシナジーを深く議論していかなければなりません。シナジーを定性的な期待に終わらせず、数字として刈り取っていく規律を取締役会として持ち続けることが重要です。
渋澤:小売業のもとで25年間の実績を築いてきた会社に「異なる遺伝子」が入ってきた、一種のアジテーション(刺激)だと捉えています。消費者に近い小売の現場に、グローバルで多角的なビジネスセンスを持つ層が加わることで、セブン銀行の価値をいかに活性化させるかが極めて重要になります。決議に至る前の段階で本質的な議論がなされ、最終的に少数株主の利益にもつながることを強く期待しています。
Q.3 前中期経営計画について
中期経営計画が目標に届かなかった点について、社外取締役としての視点から、改善点や提言をお聞かせください。
高藤:2025年度に特別損失を計上したセブンカードに関して、私自身の反省点として申し上げたいのは、議題に対してとことんまで議論を尽くせていたか、という点です。今後はしっかりと時間軸を見据え、特定の時期までに目標とする数字に到達するように取締役会としても監督するべきですし、それでも難しい場合は、もう一段踏み込んだ手を打つ覚悟も必要だと考えています。
松尾:クレジットカードビジネスはそもそも後発で非常に難しいビジネスです。オーソドックスな手法を白紙に戻し、セブン銀行グループらしい、普通のカード会社がやらないような商品性・サービスに考え方を変える必要があります。もし画期的なことができないのであれば、どこかで線を引かなければいけない時期に来ていると思っています。
木原:クレジットカード事業については、システム開発を先行させてしまったものの、もう少し目的や戦略を議論できればよかったのではないかと思っています。セブン銀行はテクノロジーをメインに据えるユニークな会社です。今こそ立ち止まって、事業ポートフォリオと経営戦略に紐付いた形でのIT投資計画について議論をより深めていく必要があります。どの投資がどの利益に結びついているのかを、全社員がより意識して進めることが大事です。
平子:2025年度までの中期経営計画は、数字が先行し、実現可能性についての議論が足りなかった。計画スタート後のPDCAも十分に機能したとは言えず、進捗管理や収益認識が甘かったと捉えており、社外取締役として十分な貢献ができなかったことを反省しています。今後は当社グループとして必要な事業かどうかを、投資と利益の関係、事業の将来性を見据えて、共通認識のもとで議論し、最適な事業ポートフォリオのあり方についての議論を増やしていきたいです。リスクアペタイト・フレームワーク(組織として受入れ可能なリスクの種類と水準を事前に定め、その範囲内で意思決定を行う枠組み)の考え方を取り入れてみたらどうかと思います。
社外取締役(独立役員) 渋澤 健
渋澤:中期経営計画は、会社経営の方向性を設定して透明性を高め、それを役員や社員が確認して計画的に進めることが本来の目的です。ですが、一度公表してしまうと数字に縛られ、自ら作った計画が大きな決断のブレーキになってしまうリスクがあります。銀行業界はこの数年で環境が激変し、金利ある世界になりました。これからの時代に求められるのは変化に対して柔軟であることです。計画のあり方を改めて見直し、環境変化に応じて大胆に軌道修正できる経営体制を整えていくべきだと考えています。
Q.4 今後の成長性、新たな3か年見通しについて
増収・増益基調への回復を掲げていますが、現時点でどんなスタートラインに立っていると考えていますか。今後、当社が重点的に取組むべき課題や投資領域について、どのようにお考えでしょうか。
高藤:2025年度4社とも黒字化した海外事業は、今後の累損解消に向け、入出金取引に留まらず、業容を拡大していってもらいたいです。当社の最大の固定資産はATM本体、最大の無形資産は、人財のほか、ATMを支えるシステムや事業パートナーのネットワーク、そこから生み出されるサービスです。この資産を使って新たに何ができるのか。社長から担当者まで、全社員がATMを通じてどんな価値を提供できるのか、朝から晩まで一生懸命考え抜くくらいの覚悟で取組み、今までとやり方を変えていくことで新たな成長ステージが見えてくると思います。25年間金利のない世界にいたために顧みる機会が少なかったコストヘッジについても、危機感をもって発想を変える必要があります。
社外取締役(独立役員) 平子 裕志
平子:当社をどうやって差別化していくのかという戦略に全神経、全リソースを集中すべきです。競合相手が誰なのかを再定義し、ATMは「バーチャルとリアルの接点」であり、当社の最大の強みは全国を網羅するATMネットワークの「立地」だという本質をどう収益に結びつけるかを明確にしなければなりません。ファミリーマートへの展開で拠点数がさらに増えることは、セブン-イレブンとの立地上のカニバリゼーションが生じるリスクをはらんでいます。しかし、ATMの機能にこれまで以上の付加価値をつけていければ、これだけの拠点数があることが強みに変わります。国内に加えて海外においても、ATM1台あたりの利用件数をどう上げていくかという問いに、真剣に向き合うことが、これからの大きな課題だと考えています。その意味では、グローバルブランド戦略も重要になると考えます。
木原:どんなにキャッシュレス化が進んでも、バーチャルとリアルのハブ(接点)は絶対に必要です。少子高齢化、地方行政のコントロールが難しくなった時に、ファミリーマートも加わった当社の社会インフラとしての価値はますます高くなります。セキュリティ技術や運用のノウハウという無形の強みを再認識し、それをどうマネタイズするかを考えていく必要があります。直近の3年間は、「+Connect」(プラスコネクト)を既存事業に次ぐ第二の収益の柱にしていくことに全精力を傾けるべきではないでしょうか。例えば行政機関へのロビー活動など、社会インフラとしてのATMのポジションを高め、生活を支えるプラットフォーマーとしてさまざまなステークホルダーとの連携を強化していくと、新たな価値創造につながると思います。
松尾:銀行という枠に当てはまらなくてもよいのではないかと思います。当社グループならではの強みを活かした画期的なサービスを開発・提供していく仕組みが必要です。松橋社長が「かつて銀行だったと言われるような存在になりたい」とおっしゃるとおり、常識を打ち破るイノベーションを期待しています。
渋澤:「企業30年説」という言葉がありますが、企業が30年以上価値を作り続けられるのは、事業を時代に合わせて進化させているからです。その意味では「事業30年説」と言えます。セブン銀行口座は、使ってみると本当に便利です。でも、次の30年後には、キャッシュは現在の形では存在しなくなるかもしれません。ROE(株主資本利益率)や売上の成長はもちろんですが、セキュリティ技術やATMネットワークの社会的役割といった非財務的な価値をしっかり可視化し、役員や社員のだれもが共通認識にすることが、これからの成長の起点になると考えています。
Q.5 ステークホルダーへのメッセージ
最後に株主および投資家をはじめ、ステークホルダーの皆さまへ社外取締役からのメッセージをお願いします。
高藤:この場で議論してきたことを実行に移すことで、セブン銀行はこれからも進化していきますので、信じていただきたいです。高いセキュリティレベルを誇る事業モデルとこれまで培ってきたノウハウを社会的価値と経済的価値の両方に変えていく取組みを真剣にやり抜いてほしい。現場で頑張っているメンバーたちが報われるためにも、経営陣はそこに一生懸命向き合ってほしいと願っています。
木原:パーパスを日々の業務に根づかせるため毎年行われるパーパスアワードでは、今年、登壇者の半数が女性だったことに驚きました。さらに、金融犯罪対策やセキュリティの現場では高い志を持って業務に邁進している社員が多くいます。パーパスに基づいて、自分の仕事に誇りを持って取組む多様な人財が現場にたくさんいます。こうした多様性を強みに変えて、組織の成果に結びつけていくことに経営として尽力してまいりますので、ぜひご期待ください。
渋澤:セブン銀行の強みはATMも口座も生活者に寄り添うことで、その存在が不可欠になるということ。そういった点からすると、個人投資家の方々に株主になっていただき、これからのセブン銀行を一緒に考えていただけるとありがたいです。約4割を占める少数株主の声がきちんと届く仕組みを作りたいですね。投資家も実に多様で、さまざまな考えがあります。当社の成長にご期待いただけるようしっかりリーチしていくことが大事だと思っています。
社外取締役(独立役員) 松尾 美香
松尾:株主総会では、セブン銀行への「愛」を感じます。その愛に応えられるような銀行・事業になりたいと思っています。今回ファミリーマートをご利用されるお客さまにも当社ATMが浸透することで、セブン銀行を使う人たちがさらに増えていく。その広がりに非常に大きな意味があると思っています。
平子:これまでATMで成長してきた会社ですが、今まさに機が熟したタイミングだと思っています。親子上場が解消されて新しい大株主が現れたというのは、非常に大きな出来事であり、この機会を活用しない手はありません。セブン銀行のATMが「バーチャルとリアルの接点」であるというユニークな位置づけを活かして、ぜひ一緒に新しい未来を考えていければ新しい景色が見えてくるはずです。ご期待いただき、ご支援を賜りますよう、よろしくお願いいたします。