2025.4.1
松橋正明×玉樹真一郎:常識にとらわれない“未知の価値”への挑戦
皆さん、こんにちは!セブン銀行 STORY of PURPOSE編集部です。今回、全世界で1億台を売り上げた「Wii(R)」の企画担当である玉樹真一郎さんとセブン銀行代表取締役社長 松橋の対談インタビューが実現しました。
常識にとらわれず未知への挑戦を続ける二人。対談では、それぞれが手掛けたサービスの裏話や、ユニークなアイデアを生み出す方法など、どんどん話が広がりました。そこで今回はいつもよりもボリュームを多めに二人のトークをお届けします!

松橋 正明
釧路工業高等専門学校卒。通信機器メーカーや電機メーカーを経て、2003年にアイワイバンク銀行(現セブン銀社)へ。
第1世代ATMから現在最新の第4世代ATMのメイン開発を担う。
2022年6月、セブン銀行の代表取締役社長就任。

玉樹 真一郎
東京工業大学・北陸先端科学技術大学院大学卒。
任天堂で、「Wii(R)」の企画担当として活躍。
2010年に退職し、青森県八戸市にUターンして「わかる事務所」を設立。
目次
セブン銀行ATMはゲームから着想を得ていた!?
松橋:私はほぼ全てのゲーム機を買い集めるほどのゲーマーなので、全世界で1億台を売り上げた「Wii(R)」の企画を手がけた玉樹さんと対談できるのが本当に楽しみでした!今日(取材日)も全社朝礼で社員に玉樹さんの書籍を紹介したばかりなんです(笑)。
玉樹:ええっ、それは光栄です…!
松橋:「Wii(R)」が発売されたとき、本当に興奮しましたね。ゲーム機としてのデザインだけでなく、ゲームの概念を「1人でやるもの」から「みんなで楽しむもの」へシフトチェンジした点がまさに、新時代の幕開けだと感じました。当時の社員にも「Wii(R)みたいなATMを作りたい」とよく話していたんですよ。
セブン銀行にも「銀行」「金融」という固定概念にとらわれずに、さまざまな事業を展開していきたいという想いがあります。そこで、ぜひ玉樹さんに常識に縛られないアイデアの発想方法についてお話を伺えればと。

玉樹:うれしいお言葉ばかりで大変恐縮です…。セブン銀行のATMも業界の常識を覆しましたよね。そもそも、「コンビニにATMを置くなんて危ない」と言われることもあったんじゃないですか?
松橋:そうなんです。当時、そういった意見があったからこそATMを置くことで逆にコンビニの安全性を高めることを目指しました。防犯カメラの設置や、トラブル発生時に警備員が迅速に駆けつける体制づくりが、その一例です。
玉樹:コンビニを最も安全なATM設置場所にするという逆転の発想、かっこいい…!今でこそ当たり前になっていますが、コンビニにATMがあるのは本当に便利ですよね。
それでいてセブン銀行のATMはデザインも美しく、操作性や視認性も高い。ユーザーがとことん使いやすいように設計されていると感じます。だからこそセブン銀行のATMを使うと、とても気分が良くなるんですよね。

松橋:まるで仕込んだかのようなお言葉(笑)。当社のこだわりに気づいていただけて本当にうれしいです。ぜひ社員にも聞かせたい!
ちなみに、「Wii(R)」のシンプルでありながら奥行きを感じさせる起動音も、ATMの音源開発に生かされているんですよ。
玉樹:え!そうなんですか!
松橋:はい。他にも画面のエフェクトやアニメーションなどにゲームの手法を取り入れられないか、長年研究を続けています。操作音の聞き心地やテンキーの押し心地など、ユーザーにとって使い心地の良いATMを模索しているんです。
玉樹:そんな細部にまでこだわられているんですね!今度から意識して使ってみようと思います(笑)。
インパクトのあるサービスは“未知の価値”から生まれる
松橋:玉樹さんはどのようにして「Wii(R)」の革新的なコンセプトを作り上げたのでしょうか。
玉樹:私が「Wii(R)」の企画をする際に最もこだわっていたのは、家族全員が楽しめるゲーム体験を提供することでした。「Wii(R)」 が家にあることで、「お父さんと話す機会が増えた」「お母さんの機嫌が良くなった」といった変化が生まれたらいいなと考えていたんです。

松橋:確かに「Wii(R)」は、ゲームが得意でない人も楽しめますよね。ゲームの目的を「クリアすること」から「楽しむこと」に変えたと思います。
玉樹:そこなんです!従来のゲームは、子どもが上手で大人がすぐ負けてしまうことが多かったと思います。しかし「Wii Sports(R)」では、ゴルフなど当時の子どもがあまりしないようなスポーツを取り上げることで、大人にも勝つチャンスが生まれました。
「クリアする」「勝つ」という、ゲームが得意な人のためのものだけでなく、「苦手な人でも無理なく、対等にみんなで楽しめる」といった新しい世界観が実現できたんです。
松橋:なるほど、私たちのATMも似たような思想を持っているのでよく分かります。イノベーションを起こすには、これまでの常識にとらわれない発想が求められますね。
玉樹:そうですね。常に“未知の価値”を探し続けることが大切なのだと思います。
松橋:“未知の価値”とは、「まだ知られていないサービス」ということでしょうか?
玉樹:「まだ知られていない、見つけられていない」という感じでしょうか。だからこそ、すぐに「良いものだ」と認めてくれる人は少ないでしょう。
でも、反発を恐れて周囲が「良い」と判断するものだけを追求してしまうと、それはつまらない企画になりかねません。なぜなら、誰もが「良い」と理解できるものは、既に誰かが思いついた“既知の価値”であることが多いからです。
松橋:あ~、分かります。全員が賛成するような企画は、たいてい期待できません。むしろ、反対意見が多いと「イケる!」と手応えを感じることが多いですね。
玉樹:共感してもらえてうれしいです!

「Wii(R)」の企画担当者が「あったらいいな」と思うATM
松橋:玉樹さんが考える“未知の価値”につながるATMとはどんなものでしょうか?
玉樹:難しい質問ですね…。でも、一つだけ言えるのは、新しい企画を考えるときは視野を広げるようにしています。今回でいえばATMのことだけを考えないようにするんです。
松橋:面白いですね、それはなぜでしょう?
玉樹:私がパッと思いつくことは、松橋社長たちが既に考え尽くしているはずだからです。これが先ほどお話しした“既知の価値”というものですね。
だからこそ、まだこの世にないものを作りたいならATMから一度離れて、自分が気になっていることにフォーカスするのが大事だと思っています。自分の興味関心につなげると飽きずにいろいろ考えることができますからね。
例えば、近年は樹木葬や遺骨を海に撒く散骨に注目が集まっていますが、個人的にはどこかにお墓があってほしいという気持ちもあって…。そんな思いが、もしかしたらATMでかなえられるのではないかと思いました。
松橋:ATMに両手を合わせてお参り…。今までになかったアイデアですね!
実現できるかどうかは別として、お客さまの「あったらいいな」を超えるためには、そういった発想が必要不可欠だと私も感じます。

玉樹:すごく突飛な例で不安だったのですが、理解していただけて良かったです。では、松橋社長が考える「ATMの未来」はどういったものでしょうか?
松橋:行政や銀行に関する各種手続きを、買い物ついでにワンストップで完結できるようにしていきたいですね。選挙の投票も、その一つ。法律的に難しい点はまだありますが、テクノロジー的にはそろそろ実現可能だと考えています。
また、ATMを究極のプライバシー空間にするために、お客さまがATMの前に立つと目隠し効果のあるバリアに覆われるような仕組みも導入していきたいと考えています。
玉樹:近未来的でワクワクしますね…!ふと「プライバシー」という単語を聞いて思いついたのですが、ATMがもっと個人的な情報にアクセスできるようになったら面白いですよね。
例えば、卒業アルバムが見られるなんてどうでしょう?それだけでなく、ATMで戸籍をたどって先祖を調べられるなど、自分のルーツにアクセスできるようになれば、より深い体験ができそうです。
松橋:その発想はなかったですね!確かに銀行は人々の人生と長く、深く結びついている存在です。だからこそ、お金以外のものを預かるというアイデアはとてもユニークだと思います。
玉樹:完全なジャストアイデアだったんですが、まさにおっしゃる通りですね!セブン銀行さんなら実現する未来が本当にあり得そうです…!
自分をワクワクさせる道が世界をより良くすると信じて
玉樹:先ほどお話したように“未知の価値”は、誰もが認める良いものではないからこそ批判されることも多いです。しかし、製品やサービスとして形にしていくには、周囲に理解してもらわないと次のステップには進めないのも事実です。
松橋:その通り。何か新しいことを始めるときは、いかに周囲を巻き込めるかが大事です。
玉樹:私は自分すら巻き込めない人が、他者を巻きこむことは不可能だと思っているので、新しい企画を考えるときは自分が心から面白いと思えるかどうかを大切にしています。自分自身が本当に夢中になれるアイデアであるなら、たとえ目の前に高い壁が立ちはだかっても、それを乗り越えていけるはずですから。
そして、自分が「良い」と信じて生み出した製品やサービスが実際に形になったとき、それは世界をより良くすると同時に、自分自身を幸せにしてくれるのだと思います。

松橋:素敵な考え方ですね。それでいくと私も、新しいサービスを考えるときは自分がワクワクするかどうかを意識している気がします。
例えば、今のATMはお金を下ろすことが主目的です。旅行やデートなどを楽しむための手段の一つでしかありません。
ただ、自分がユーザーなら、旅行やデートに向かう途中のATMでもテンションを上げていきたいなと思うんです。だからこそ、ATM開発でゲームの手法を参考にしているという側面もあります。
玉樹:つまり、ワクワク感を高めるATMを目指すことが、世界をより良くする。それと同時に松橋社長自身の幸せにも直結しているということですね。
松橋:その通りです。結局は、自分が「面白い」「楽しい」と思えるかどうかが一番ですよね。
玉樹:間違いないです。今日の対談を通して、やっぱり松橋社長のようなマインドがないと、セブン銀行の革新的なATMは生まれないよなぁと納得しました。なんだかホクホクした気持ちになっています(笑)。
松橋:ありがとうございます。私もずっとお会いしたかった玉樹さんと対談でき、とても有意義な時間でした。まだまだ話足りないです。
これからもお客さまの期待を超える“未知の価値”を生み出し続けるためにお互い頑張っていきましょう。

※記事内容は公開時点での情報となります。サービス等の最新情報はセブン銀行ホームページにてご確認ください。


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