2025.5.1
AI時代に必要なのはDX人材より「X人財」。カルチャー変革にアートを取り入れた狙いを語る
セブン銀行は社会の変化とともに生まれる「あったらいいな」に応え、新しい価値を生み出してきました。その挑戦の姿勢を次の時代へつなぐため、2025年度からは、DX時代にこそ求められる、『X人財』の育成に力を入れています。
今回はその中から、ビジネスとは一見対極にある「アート」を取り入れた研修『EGAKUプログラム』、そして育成体系『SEVENBANK Academia』について深掘りしていきます。
目次
安定の中で生まれる危機感。セブン銀行が進めるカルチャー変革
―『SEVENBANK Academia』を立ち上げた背景について教えてください。
竹田:セブン銀行はもともと、前例のないことに挑み、新しい挑戦でサービスを生み出してきた会社です。しかし、事業が安定し組織が大きくなるにつれて、どうしても守りの姿勢が生まれてしまった側面もあります。効率や正解だけを求めるカルチャーが強くなりすぎると、新しい価値を生み出す力が弱くなるのではないか。近年そんな危機感がありました。
そうした背景から、社員のマインドを変え、創業期にあったような挑戦する文化をもう一度活性化させる取組みとして立ち上げたのが『SEVENBANK Academia』です。
セブン・ラボ部長 竹田 達哉
―立ち上げから今年で4年目になりますが、手応えはいかがですか。
竹田:社内に「会社を変えようとしている動きがある」という認識は、少しずつですが浸透してきたと感じています。ただ、まだ完成したわけではありません。今も走りながら常にプログラムの改善を進めている段階です。
―この取組みを通して、どのような人財を育てたいと考えていますか。
竹田:これからの時代に必要なのは、与えられた課題を解くだけの人財ではなく、潜在的・将来的な課題を自ら見つけ、創造力とテクノロジーを駆使して変革を起こせる人財だと考えています。
世の中ではよく「DX人材」という言葉が使われますが、DXとはデジタルトランスフォーメーションの略ですよね。最近ではデジタルに限らず、ありとあらゆる手段を使って、トランスフォーメーションを起こす『X人財』という言葉も注目されています。私たちも社員に、デジタルという枠にとらわれず、自分自身や会社、そして社会を変革できる存在になってほしいと考えています。だからこそ、私たちが目指す次世代の姿として、この『X人財』という言葉を掲げています。
AI時代を生き抜く土台となる非認知能力とは
―今回導入された『EGAKUプログラム』とは、どのような内容なのでしょうか。
長谷部:アーティストが絵を描くプロセスに着目して開発されたプログラムです。絵を描くというと、どうしても「上手い・下手」を気にしてしまうものですが、本来アートとは「正解のない問いに対して自分なりの答えを形にしていく行為」です。もともとは子ども向けに開発されたものですが、現在では220社以上の企業や大学で導入されています。
企業研修では、クリエイティビティの向上はもちろん、コミュニケーション力やクリティカル思考、さらには無意識の思い込みへの気づきなど、非認知能力を高めることを目的とするケースが多いですね。
参加者同士で作品を鑑賞し合い対話を重ねることで、「同じテーマでも、人によってこんなに見ている世界が違うのか」という、自分とは異なる視点や価値観に気づくきっかけにもなります。
株式会社ホワイトシップ 代表取締役 長谷部 貴美さん
―なぜ『EGAKUプログラム』を取り入れたのでしょうか。
竹田:ロジカルシンキングをはじめとする、論理的思考力を鍛える研修はすでに多くあります。普段の業務でも私たちは論理的思考を使う場面がほとんどです。しかし、新しい価値を生み出すには、論理だけではなく、想像力や発想力、クリエイティビティが不可欠です。
実際に私自身、クリエイターの方の発想に触れるたびに、思考の枠が広がる感覚があります。社員にもそうした体験をしてほしいと考えました。
特に最近はAIの進化もあり、「人間にしかできないことは何か」という問いがより重要になっています。その答えのひとつである好奇心や柔軟性といった非認知能力を引出す手段として、アートは非常に有効だと思いました。
同じテーマでも表現は違う。作品を通じて見えたそれぞれの価値観
今回の『EGAKUプログラム』では、参加者がフラットに同じテーマに向き合いながら作品を制作し、その作品をもとに対話を重ねていきました。
実際に参加した社員からは、次のような声が聞かれました。
・「自分自身とこれほどしっかり向き合う時間は初めてでした。普段は言葉でうまく伝えられないことも、絵という非言語の表現で形にできた気がします。」
・「最初は“絵を描く研修?”と身構えていましたが、実際には自分の思考を深く掘り下げることができた時間でした。日常業務ではなかなか使わない脳を使った感覚です。」
・「通常業務から離れた場で、役職や部署に関係なく、一人の人間として自分をさらけ出して話せる機会はとても貴重でした。普段はなかなかお話しする機会のない役員の方の思いを、若手である自分が聞けたのは本当に良かったです。」
―研修全体を通して、どのような印象を持たれましたか。
竹田:作品を鑑賞し合う時間が特に印象的でしたね。同じテーマでも一人ひとりまったく違う表現になっていて、それぞれが大切にしている価値観や視点が表れていると感じます。
普段の業務では、どうしても部長とグループ長、上司と部下といった役割や立場のフィルター越しに接してしまいがちですが、この研修では一人の人間としての考え方や個性が自然と浮かび上がってきます。社員の中にある多様な視点や可能性に、私自身改めて気づかされました。
―研修を通じて、参加者の様子に変化はありましたか。
竹田:今回は3回コースで実施しましたが、回を重ねるごとに、枠にとらわれない表現が増えていくのを感じました。最初は戸惑っていた人も、最後には自分なりの表現を楽しんでいる様子が見られました。
こうした変化を見ると、社員の中にはまだまだ業務で発揮されていない力があるのだと確信しました。この研修は、その可能性に気づくきっかけになったのではないでしょうか。
長谷部:経験を積んだベテランや役職者ほど、無意識のうちに「自分はこういう人間だ」「ここが限界だ」という思考の枠を作ってしまう傾向があります。しかし今回は、その枠を自ら取り去り、解放する姿も見られました。既存の思考から解放される体験は、新しい価値を見出す力になっていくはずです。
現場の問いから変革へ。セブン銀行が描く未来
―今後の展望についてお聞かせください。
竹田:『SEVENBANK Academia』は手挙げ制のため、どうしても参加する人が固定化されがちです。ただ最近は、これまで手を挙げてこなかった人が参加してくれるケースも少しずつ増えてきています。
今回のように「面白そうだな」と思って参加してくれた人が、周囲に「良かったよ」と伝えてくれることで、熱量が伝播し、取組みが広がっていくのではないかと考えています。
もう少し大きな視点で言うと、私は『X人財』が起こすべきトランスフォーメーションの規模は、最終的には社会を変えるレベルであってほしいと考えています。与えられた課題をこなすだけでなく、そのサービスによって「社会をどう変えたいか」という視点を持つことが大切だと思います。
長谷部:社会変革というと壮大に感じるかもしれませんが、その第一歩は、日々の業務の中で「これって本当にいいんだっけ?」と、あえて考えてみることから始まると思っています。
効率を求める業務の中では、立ち止まることは非効率に思えるかもしれません。でも、「もっとこうだったら」という個人的な違和感や疑問を大切にし、発信していくことが、結果として大きな変革へとつながるはずです。
竹田:まさにそうですね。今は「正解がない時代」だと言われますが、最後に頼りになるのは、AIの答えではなく、自分の目で現実を見て、自分の頭で考えることだと思います。
『三現主義(現場・現物・現実)』という言葉があるように、自ら現場に足を運び、現物を見て、現実を知り、それをベースにアイデアを練る。それがこれからのイノベーションの土台になるのではないでしょうか。
こうした実体験に基づく思考を大切にしながら、「個」の可能性を拓く取組みを続けていきたいです。その積み重ねによってセブン銀行が『X人財』の集まる組織となり、社会を変革し続けることにつながると信じています。

株式会社ホワイトシップ 代表取締役 共同創業者
長谷部 貴美さん
2001年、アーティストの谷澤邦彦氏と株式会社ホワイトシップを創業。アートプログラム「EGAKU®」を開発し、大手企業を中心に200社以上の導入実績。書籍「社会性と情動の学習- SELと非認知スキルで未来を拓く教育」分担執筆。
※記事内容は公開時点での情報となります。サービス等の最新情報はセブン銀行ホームページにてご確認ください。
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