2026.8.3
おこづかい帳アプリ×カード『money ring』― キャッシュレス時代の「お金の教育」に向き合う、セブン銀行の挑戦
キャッシュレス決済が日常になり、私たち親世代が子どもにお金の価値や使い方をどう伝えればいいか、悩む場面が増えています。しかし、お金と向き合うことは、単なる金銭管理にとどまらず、将来を生きるうえで必要な計画性や判断力を育むことでもあります。
そこでセブン銀行は2026年、おこづかい帳アプリとプリペイドカードを組み合わせた親子向け教育サービス『money ring(マネーリング)』を開発しました。発案者は、セブン・ラボ 副部長の内田万美子。2人の小学生を育てる母親でもある内田が日々感じてきた葛藤と、『money ring』に込めた想いを、教育学者である汐見稔幸先生とともに語ります。
目次
「見えないお金の時代」に、親が直面している課題
―キャッシュレス化が進んだことで、日常生活で現金を目にする機会が格段に減りました。この変化は、子どもたちにどのような影響を与えているのでしょうか。
内田:私自身、小学生の子どもを育てるなかで、子どもが「お金のありがたみ」を十分に理解できていないと実感しています。親が買い物をする場面でも、クレジットカードやスマホ決済を利用しているために、目の前で現金のやりとりを目にする機会がほとんどありません。子どもにとっては「スマホでピッ」とかざせば、無限にモノが手に入ると思っているのではないか、と違和感を覚えたんです。
かつてのように、決められた額のお金を自分でやりくりする経験を通じて、きちんとお金との向き合い方を教えたいと思ったのが、今回のプロジェクトを立ち上げるきっかけとなりました。
セブン・ラボ 副部長 内田 万美子
―汐見先生に質問です。お金が「見えないもの」になっている現状について、教育学の観点からどのように見ていらっしゃいますか。
汐見:実はキャッシュレス化が進む以前から、すでに「お金はATMという機械から出てくるもの」へと変わり始めていました。子どもたちは親がATMを操作している様子を見て、「あの機械を操作すればお金が出てくるんだ」ととらえてしまう。そこに至るまでに、親がどれほど苦労して働いてお金を稼いできたかというプロセスは、一切伝わらなくなってしまっていたのです。
お給料が手渡しだった時代には、親が持ち帰る給料袋などから「働いた対価としてお金を得ている」と自然に学べました。しかし給与振込が主流になり、さらにキャッシュレス化が進んだ現代では、お金が引き出されるプロセスすら見えません。お金がどこから来てどこへ行くのか、そして家庭の経済状況を知ることが非常に難しい時代だと言えます。
一般社団法人家族・保育デザイン研究所 代表理事 汐見 稔幸
―親自身がキャッシュレスで生活しているなかで、子どもにだけ「おこづかいは現金で」と強いることの難しさもありますよね。
内田:本当にその通りなんです。サービスを考案する以前に、子どもにおこづかい帳をつけてもらうという方法も考えましたが、そもそも親の私自身が手元に現金を持っていなかったり、毎月決まった金額のお金を用意するのが手間だったりして、なかなか踏み切れませんでした。それに、親はキャッシュレスで生活しているのに、子どもにだけ「現金で管理しなさい」というのは矛盾していますよね。何より子どもたちも大人になればキャッシュレスな社会で生活するようになります。それならば、これからの社会を上手に、賢く生きていけるような「お金の使い方」や「管理の仕方」ができるようになってほしいなと思ったんです。
おこづかい帳の「使った履歴を振り返れる」良さを残しながら、これからのキャッシュレス社会で生きていくための実践的な管理する力を育む。その両方をかなえるために生まれたのが、プリペイドカードと管理用アプリをセットにしたサービス『money ring』です。
おこづかいは、一生ものの「生きる力」を練習する場所
―「money ring」の設計にあたり、サービスの価値を支える思想を「3つの輪」で表現されています。それぞれ説明をお願いします。
内田:子どもの計画性や自己管理などの能力を実践の場で育む「学びと育ちの輪」、対話を促す「親子の輪」、そして見守りながら安全に買い物を学べる「安心と便利の輪」。おこづかいの管理を通じて、この3つが相互に作用しあうことで、金銭管理に加え、いわゆる「生きる力」を養うことができるように設計しています。
―具体的なサービスの仕組みを教えていただけますか。
内田:親のアプリから、子ども用のプリペイドカードに任意の金額※をチャージして、おこづかいとして渡すことができます。子どもはそのカードを持って、コンビニやスーパー、ネットショップなどのVISA加盟店でお買い物ができます。プリペイドカードなので、チャージした金額以上は使えない仕様になっており、使いすぎの防止や紛失した際のリスクなども抑えられます。
また、自動で使った履歴がアプリに残るので、おこづかい帳が「三日坊主」になってしまう心配もありません。限られた金額のなかで「何を買って、何を我慢するか」を子ども自身が振り返り、考える経験にもなります。
- ※上限3万円までチャージ可能
―おこづかいのやりくりを通じて、子どもが自分で計画を立てたり失敗したりする経験には、どのような教育的価値があるのでしょうか。
汐見:おこづかいを計画的に使い、自分でコントロールして、欲しいもののために少しずつ貯金する。この一連の経験は、生涯にわたって役に立つ、まさに「一生もののスキル」です。そして、その過程での失敗こそが、何よりの教材になります。
もちろん子どもですから、最初はたくさん失敗をします。使いすぎて月末に足りなくなってしまうこともあるでしょう。失敗の中身によっては、親が少し援助してあげてもいいですが、基本は子ども自身が頭を使って自分でやり繰りを頑張るべきだと思います。
そもそも「おこづかい」というのは、なかなか優れた文化です。おこづかいは、親から子どもへの無条件の贈与であり、同時に「お金の管理を練習する機会」でもあります。『money ring』は、この「おこづかいを計画的に使う練習」の側面を、現代のデジタル環境で見事に進化させていると感じます。
―『money ring』には、お手伝いでおこづかいを追加してもらえる機能もあるのですね。
内田:はい。おこづかいを使いすぎてしまったときには、お風呂掃除や食器洗いなどのお手伝いをすることで、親から追加チャージを受取れる「ミッション機能」があり、お手伝いの内容や金額は各ご家庭で自由に設定できます。決められた中でのやりくりだけでなく、労働の対価としてお金を得る経験を家庭のなかで得られるチャンスにもなると思います。
『money ring』が目指す、失敗を肯定する新しい親子のコミュニケーション
―「3つの輪」に親子のコミュニケーションを促すというキーワードもありましたが、くわしく教えていただけますか。
内田:例えば、アプリ上で確認できる「利用履歴」は、何を買ったのかを親子で振り返れるものになっています。ただ、「また無駄遣いして!」と子どもを責めたり、親が子どものお金の使い方を管理したりするものではありません。「これを買ってみて、どうだった?」と問いかけたり、「これは買わなくてもよかったかも。そしたらあれが買えたな」といった、子ども自身に思考や気づきを与えたりするための、親子のコミュニケーションを生む機能ととらえていただけたらと思います。
―「管理するのではなく、対話を促す」という思想は、どのようにして生まれたのでしょうか。
内田:汐見先生とお話をしていくなかで、「金銭管理だけでなく、親子の会話を活性化させる設計にしたい」と考えるようになりました。とはいえ、お金を任せる親御さんの不安に寄り添い、自立を促すための声かけのコツやヒントなども、セブン銀行として発信していきたいと考えています。
―親子の「理想的なコミュニケーション」について、どのようにアドバイスされますか。
汐見:親子で会話を…というと多くの方が「今日は学校で何をしたの?」「宿題はちゃんとやったの?」といった「質問」を思い浮かべると思います。でも、これは会話ではなく尋問になってしまいがちです。
子ども本人が自発的に語りたくなるような対話こそが、本当の意味で広がってほしいコミュニケーションです。議論や質問ではなく、他愛ない雑談のなかで大笑いしあえるような空気に満ちたコミュニケーションの中でこそ、子どもの本音もこぼれてくるものです。
まずは親から、「今日仕事でこんな面白いことがあってさ」「買い物をしたら、こんな発見があったよ」と、そんな体験を共有してみてください。そして『money ring』の履歴を見ながら、「これ、面白そうだね!お母さんにも教えて」と、子どもの選択を面白がる姿勢を持つ。このサービスを通じて、子どもとどういう会話をしていくかを非常に楽しみにしています。
おこづかいという身近な体験から、社会と未来を学ぶ
―このサービスを通して、利用する親子にどのような価値を届けたいですか。
内田:出発点は「お金の大切さ、ありがたみを知ってほしい」という悩みでしたが、社内外でのインタビューのなかで、多くの親御さんが「先の見えないこれからの時代を生き抜く力をつけてほしい」と切実に願っていることに気がつきました。AIが急速に発達して、人の手を離れた仕事や作業もたくさんあります。お金を使うこと以外にも、知らないこと、経験がないことが増えていくはずです。だからこそ、自分で考えて選び、挑戦する「生きる力」を大切に育ててほしい。おこづかいという日常の身近な体験を通じて、その力を育む一助になりたいと考えています。
―セブン銀行のパーパスである「お客さまの『あったらいいな』を超えて、日常の未来を生みだし続ける。」という姿勢にもつながる取組みですね。
内田:そうですね。「子どもの自主性に任せたいけれど、見守れるところで安全に経験を積んでほしい。」そういった親御さんの「あったらいいな」に応えるのはもちろん、おこづかい管理の範囲を超えてさらに広い「生きる力」を育む体験へとつながる仕組みや機能も備えています。
セブン銀行は、セブン‐イレブンという小売業から生まれた金融機関です。誰もが経験する初めてのお使い、つまりお金のやりとりが発生する場所が小売の現場です。その意味でもセブン銀行が「お金の管理から学びの場を提供する」お手伝いをする意義があると考えています。
子どもたちが実際に街の中で経済と触れ合うための新しい体験を、今後もどんどん模索していきたいです。将来的には、ご利用いただく保護者やお子さんの意見も取り入れながら、一緒にサービスを育てていけたらよりよいものになっていくだろうなと感じています。
―最後に、汐見先生からおこづかいから「社会の仕組み」を学ぶことの重要性について、コメントをお願いします。
汐見:「経済学(economy)」の語源は、ギリシャ語で「家庭の論理」を意味する「オイコノミア」です。経済学とはお金を稼ぐための学問ではなく、「どうすれば人間が幸せに暮らせるか」を考える温かい学問。おこづかいをきっかけに家庭でお金について語り合うことは、社会がお金を媒介としてどのような仕組みで動いているのかを学ぶことにつながります。このサービスが親子の日常に浸透し、社会に開かれた存在へと大きく育っていくことを期待しています。
汐見 稔幸(しおみ としゆき)さん
東京大学名誉教授、白梅学園大学名誉学長、一般社団法人家族・保育デザイン研究所 代表理事。専門は教育学、教育人間学、保育学、育児学。21世紀型の保育や教育のあり方を模索し、子どもの教育に幅広くかかわる教育・保育評論家として活躍。NHK-Eテレ「すくすく子育て」などの子育て番組にも出演し、多くの親から支持を集めている。近著に『子どもの生きる力をのばす5つの体験』(辰巳書房)など著書多数。
※記事内容は公開時点での情報となります。サービス等の最新情報はセブン銀行ホームページにてご確認ください。
その想いを超え、日常のみらいへ。
セブン銀行は、あなたの毎日をもっと便利に、もっと快適に。



